さて、手元にノートパソコンがきたのでとにかく何か打ってみよう、と思う。
「ノートPCにすれば幾らかは文章を書きやすい」とは思っていたが、むしろ真っ先に飛び込んできたのは「右半身麻痺はマウスが使えない」という驚きである。
おやおや「半身なんだから当然だろう」といった顔をしたヤツがいるようだ、私だって自分がこのような体験を得るまえはきっとそういう顔つきでいたに違いない。
だがどうだ。
上手く起動するか、上手く文章は書けるのか、病室で怒られたりしないのか、といったハードルに隠れてその問題は姿を隠す。そして今その時間、パソコンをいよいよ操作をするその時、私にずっと片隅にありながらも同時に初めて対面するのである。
「マウス使えないのでは?????」
この時、私は予想された不具者からまったくの偶然の不具者へと姿を変える。自分の身体障害がもたらす様々に私らしく立ち向かうのではなく、本人の知りえない思いもよらぬ一撃によって狼狽と蒙昧に追い詰められてしまう。
ああ少女よ、いや美少女よ。その身体は今にも虚空から飛び出た不意の刃物で、ずたずたにさせられてしまうのか。
「マウス左手側に置けばよいのでは」
神はいた。
そう確かに彼女の双眸へすべての救済は一切も映らなかった。しかし見出したのだ。ある者は彼女がついぞ捨てなかった信仰の証しだと、またある者は最後に彼女が示した知識の希望だと、はたまたある者は偶然によって生まれた幸運であると。
そのどれでもあるし、どれでもないのかもしれない。
少なくとも彼女は助かった。助かったのだ。
……その後、右顔面のマヒで洋服にべっとりと涎をこぼそうとも。