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☆ネタバレしまくりなので注意。 ・「眠れる森の美女」ロマンスコーデ 劇場版『アイカツ!』のラスト、大スター宮いちご祭り!のアンコールでは星宮いちご、神崎美月、大空あかりの三人によるものであり、そしてここで選択されているコーデが非常に印象的だった。 星宮いちごが着るのは、エンジェリーシュガーのリラフェアリーコーデ 神崎美月が着るのは、ラブムーンライズのシャインウィッチコーデ そして大空あかりが着るのは、ドリーミークラウンのスリーピングオーロラコーデ である。 そしてこの3つのドレスはアイカツカード2015シリーズから採用された「ロマンスストーリー」という「物語からインスパイアされたデザイン」という括りの中で「眠れる森の美女」シリーズとして作成されている。 このアイカツカードの裏の説明に書かれている「眠りの森の美女:オーロラ姫」の紹介には「魔女によって死の呪いをかけられた美しい姫。心優しき妖精のおかげで、死ではなく100年間の眠りについた」とある。 ・神崎美月という呪い アイドルランキング1位を死守したままトップアイドルとして君臨し続ける神埼美月は、全てのアイドルの憧れであり、目標であり、そして呪いである。 神崎美月の切り開いていく「アイドル」という高みには、誰も追いつけず、全てのアイドルは彼女の歩いた道の後塵を拝することしかできないのである。「美月さんのようなアイドルになりたい」と誰もがその姿を羨む世界は、無限に神崎美月の劣化コピーを生産するだけで、永遠に新しい世界へ踏み出すことは出来ないのである。 神崎美月自身も、スターライト学園入学当初に結成した4人組、かえで・ユリカと組んだ「トライスター」あるいはみくるとのユニット「ダブルエム」といった「次々に人を巻き込んでは、解散させていく」姿は、正に「呪いの化身」でありその可視化された「結成、解散」の流れだけではなく「美月という大きすぎる存在」によってアイドルという生き方を断念した名前の無い少女たちが数え切れないほど存在していたことを感じさせる。 ・祝福を呼ぶもの ロマンスストーリー「眠りの森の美女」の話に沿うならシャインウィッチコーデ=魔女の呪いに対抗するのは、リラフェアリーコーデ=心優しき妖精の役割を与えられた星宮いちごである。 100話以上に渡る『アイカツ』テレビシリーズによって、私たちは星宮いちごが「パーフェクトな人間」では無いことを知っている。それは作中で完全な存在として描かれる神崎美月に対して、星宮いちごが全てにおいて上回れる可能性はゼロに等しい。しかし「アイドル」というステージにおいて、その「パーフェクトではない」ことが美月に対するカウンターとして働くのである。 美月に憧れ、同じことをしていても生まれるのは「美月の劣化コピー」である。美月と同じ場所に立つには、あるいは美月を乗り越えるためには、美月とは違う方法で「トップアイドル」への道を示さなくてはならない。 いちごが初めて美月に憧れたのはスターライズスタジアムで行われた美月のソロライブである。 そしてこの「大スター宮いちご祭り」は、同じスターライズスタジアムでありながら「沢山の仲間」の手によってライブが行われる。 同じ場所で、違う方法で、ライブを成功させたいちごは遂に美月を越えアイカツランキング1位になる。 「美月というトップアイドル」が、美月のコピーではない方法で陥落したこの結果は、「美月のようにならなければならない」という呪いからアイドルたちを解放するものであり、同時に「仲間たちと」作り上げたこのステージは「トップにはなれないアイドル」にも、アイドルとして生きる事を承認する祝福なのである。 ・祝福されるための呪い、目覚めるための眠り 美月に憧れてアイドルになったいちご。「神崎美月という呪い」からアイドルたちを解放するためには「星宮いちごという祝福」が必要であり、しかしその星宮いちごは神崎美月という存在なくしてはアイドルを目指してはいないのである。 そしてそれは大空あかりについても言える。 美月というトップアイドルが支配的であればあるほど、大空あかりが「アイドルになれる」可能性は低下していく。 それはテレビシリーズ第76話で見せたスターライト学園入学オーディションのように、大空あかりのパフォーマンスはその時点においてかなり低い。 確固たるトップアイドル像として美月がいる限り、あかりの入学オーディション合格はありえなかっただろう。 しかし星宮いちごが示した「美月とは違うトップアイドル像(この時点ではまだその”可能性”でしかなかったが)」が、あかりの中に眠る「アイドルの輝き」を発見させたのである。 「眠れる森の美女」のストーリーに当てはめるなら、本来は魔女=美月の呪いによって「死=アイドルになれない」定めであったオーロラ姫=あかりは、しかし妖精=いちごの祝福によって「眠り=アイドル候補生」になることができたのである。 一方でいちごに強く憧れるあかりは、美月による呪いと同じように「いちごによる眠り」に囚われてしまうのである。 その「眠り」が無ければ、待っているのは「死」であり、ひかりが「アイドル」になるにはその「眠り」は必ず必要なものであり。そして候補生からアイドルへいつか「目覚め」なければならない。 それはいちごが「美月の呪い」があったからこそ祝福を呼べたたように、いつかあかりも「いちごの眠り」があるからこそ「アイドル」へと目覚めることができるのだ。 眠れる姫を目覚めさせるのは王子のキスである。 アンコール前のアイカツシステムの前で、大空あかりは手にしてアイカツカードにキスをした。 美月とも、いちごとも、違う方法で大空あかりはトップアイドルにならなければならない。そしてそのアイドルへの目覚めをもたらすキスは「自分自身によって」行われるのだ。
by SpankPunk
| 2014-12-22 15:55
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