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ついに完結をした志村貴子『放浪息子』。その最終巻である15巻内で、私がもっとも強い感動を覚えたのは結末でも登場人物たちの心情が強く描かれたシーンでもなく、この巻の中では割と「なんでもない」2ページなのである。 それがこの場面だ。 ![]() この場面のコマと視線の構成がとにかく凄いのだ。 まずは左ページ4コマ目から5コマ目にかけての「ぼくもよどみなく話せた」のが「ママの聞き方がうまいんだ」という理由に思い至る部分。 右ページ4コマ目ではカウンターを挟んで「ぼく」と「ママ」が会話をしている。そして左ページ4コマ目ではカウンターを挟んで「お客」と「ママ」が会話しているのを、「ぼく」がカウンターの内側から見ている。 この二つのコマの構図は、ほぼ同じように描かれているのである。 ![]() つまりここで「ぼく」は、カウンターの内側に入ることによって先の「ぼくとママ」の会話と同様の技術を持って「お客とママ」が会話していることを観察する。 同じ構図を俯瞰して観察することで、初めて「ぼく」が「よどみなく話せた」のは「ママの聞き方がうまい」からだ、ということに気が付くのである。 そして更に注目すべきは最後のコマである。 ![]() 漫画における物語は(基本的に)右から左に進行しているので、ここで「ぼく」の視線は時間の流れに逆行して左から右へ向かっている。 つまりここで「ぼく」の目線は”未来”ではなく”過去”に向けられているのだ。 そこで差し込まれるモノローグが「そういうの/ちゃんと学ぼう」である。ではここで言われる「そういうの」とは何か。 その答えは視線の先にある。 ![]() 「お客とママ」の会話をカウンターの内側から観察することで、さっきの「ぼくとママ」がママの技術によって「よどみなく話せた」ことに気が付いた。 そこで「ぼく」は「そういうの」――つまり視線の向かう先で「ママの聞きかたがうまいんだ」という言葉を再び経由して、そこにある「ぼくとママ」の会話を反芻することで「ちゃんと学ぼう」としているのだ。 ここで物語の進行方向と視線の方向を逆行させることで、読者もそこで立ち止まり「ぼく」の視線の先を意識させられ、その想いに同期することとなる。 つまりこの場面では、コマ割/構図/視線の向き/感情移入が「分割不可能」なレベルで溶け合い、渾然一体となった表現を行っているのである。 動画でも絵画でも小説でもない「漫画」だからこそできる表現が、この2ページには詰まっているのだ。 だから私は『放浪息子』15巻でもっとも感動したシーンに、この見開き2ページを選ぶのである。
by SpankPunk
| 2013-09-20 21:23
| 漫画
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